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ぽえまのこうしん
更新記録と小ネタ。
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前に立つ人物をなるべく刺激しないように、慎重に言葉を選んで告げる。
何しろ自他ともに認める『どS』だ。
しかも今日は普段普通の人間ならそう持ち歩くことが無いようなものを所持している。
正直怖い。
「あの、スイマセン沖田隊長、オレ市内見廻りに行かなきゃなんないんですけど」
「そうですかい」
出来たら早くどいて欲しいのだが、目の前の人物は山崎が右へ動けば左へ、左へ動けば右へ、と邪魔をし、通してくれる気が無さそうだ。
今頃車の中で短気な副長がイライラし出しているに違いない。
煙草が3本目を過ぎないうちに関所を潜りぬけたいのだが、どSの門番が大人しく通してくれるだろうか。
それにもう一つ気になるものがある。
「いや、そうですかい、じゃなくってですね。縄持って人の前に立たないで貰えませんか。つか何で縄?!」
何する気だそれで!
沖田は当たり前だろうという風にさらりと答える。
「縛らなきゃ山崎が逃げるじゃないですか」
「やっぱり縛る気ですかぁあ!」
薄々そうなんじゃないかという嫌な予感はしていたが、思った通りだったらしい。
悪いが本当にこっちはそういう趣味は無いのだ。
勿論沖田の趣味嗜好に合わせる気も無い。
かと言って本気を出されれば真選組一の剣士沖田に敵う筈は無い。
こんなことで才能を無駄使いしないで欲しいものだが。
とにかく捕まって縛りあげられる前に、この場から逃げださなければならない。
逃げ腰の山崎に、相手はじりじりと間合いを詰めてくる。
追いつめられた山崎が逃走の手段として使ったのはあんぱんだった。
しかし必死の想いで投げたあんぱんはあっさりと避けられる。
知恵空党の奴らには有効な攻撃手段だったのだが、やはり沖田には通用しなかった。
少しでも隙を作ることが出来れば、と思ったのだが、あんぱんでは無理だった。
「あーあ」
潰れたあんぱんを見て沖田がにやりと嫌な笑いを浮かべる。

 
「食いものを粗末にする奴にはお仕置きが必要ですねぃ」

 
あまりに遅い山崎に、痺れを切らした副長が怒鳴る声が近づいてくるのを、今日ほど有難く思ったことは無い。



END

***
沖山

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