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ぽえまのこうしん
更新記録と小ネタ。
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朴と一緒に購買部へ行こうとしたら奥村燐を見つけた。
塾では無く、学校で鉢合わせるなんて珍しい。
人通りの多い中庭の片隅にあるベンチで弁当らしき包みを広げていた燐は、此方の顔を認めると少し後退さる様な素振りを見せた。
気に入らない。
ずんずん歩いて行って目の前に立ってやる。
「何よ」
なんか文句あるの。
ベンチに座る燐は出雲に見降ろされて歯切れ悪くごにょごにょ言った。
「いやまた汚いとか言われるかと思ってよ…」
汚い。
この間の合宿の時の話だ。
貸してくれたTシャツを洗って返した、其処までは良かったのだが、妙に感激されたものでつい、汚かったから洗っただけ、と言ってしまったのだ。
謂わば照れ隠し、だった。
しかし燐は其れを気にしているらしい。
「…洗濯してないの?」
合宿場所となったあの古びた寮には奥村兄弟しか居ないのだと聞いていた。
男だけの生活、しかも雪男の方はともかく、燐はとてもマメな性格をしているとは思えない。
洗濯などしていなのではないだろうか。
今度は此方が後退さりながら問う。
「してるよ!」
燐はがあ!と怒鳴った。
「でもよ、洗濯ってあんま好きじゃねえんだよな」
「洗濯機に突っ込めばいいだけでしょう」
あの寮は洗濯機もないのだろうか。
そう思ったが違うらしい。
「その後があるだろ。干すのがメンドくせえんだって。雪男はすぐ皺になるだのもっときちんと干せだの言うしよ…」
確かに言いそうだ。
そう思って少し笑う。
「あ、でも料理は得意なんだぜ」
「はあ?料理?」
料理なんて、洗濯よりも大変じゃないの。
得意だなんて信じられない。
此方の思考を読んだのか、燐は広げかけていた弁当を指し示す。
「ホントだって!ほらこの弁当も自分で作ったんだぜ」
そう言いながら開けられた蓋の内側には、彩りも綺麗な美味しそうな弁当が詰められていた。
美味しそうだ。
「これを、アンタが?」
これを燐が作ったなんて益々信じられない。
「おお!食ってみるか?旨いぞ」
ほれ、と笑顔で差し出されたのは玉子焼き。
突き付けられた箸の先の其れをじっと見つめる。
その間にも出雲の後ろを他の生徒が何人も通り過ぎていく。
 
 
ふっくら焼き上げられたそれは見た目も美味しそうだけれど。
『あーん』と口を開けろ、と言わんばかりの笑顔の前で。

 
「要らないわよ!」
思わず怒鳴っていた。
朴も居るし、此処は人目が多すぎる。

 
こんな状況で食べられる訳が無いじゃない!



END

***
燐出雲
出雲ちゃんはツンデレだし
こういう状況で食べてくれるはずがないかと。

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