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ぽえまのこうしん
更新記録と小ネタ。
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庭に面したテラスで本を読んでいると小さな弟の声がした。
「わー、とってもきれいなお花!」
本を置いて立ち上がると、末の弟が花壇の前にしゃがみ込んでいる。
其処にある花を見ているらしい。
「おとうさまにみせてあげよう」
そう言って弟はその花を摘もうとした。
弟は本当に父が好きだ。
いつのまにやってきたのかその弟の手を上の弟がぺちと叩く。
「今摘んだら父さんが帰ってくる前に枯れちゃうだろ」
折ったら花が可哀相だ、という言い方をしない辺りが次男らしい。
少し乱暴で素直でないところもあるが、根は優しい子なのだ。
見ていることに気が付いたのだろう、二人が此方にやって来た。
末の弟が聞く。
「ねえクリス兄サマ、おとうさまはいつかえってくるのですか?」
「もうすぐだよ」
笑って答えると、上の弟が言った。
「兄さんは父さんの手伝いしなくて大丈夫なのかよ」
手伝い。
そうだ、自分は父の仕事の手伝いをしていた筈だ。
簡単な調べ物や記録など、父は自分に任せてくれていた。
何故自分は仕事をせずに、此処に、弟達と一緒に居るのだろう。
父の側に居ないのだろう。
「あ、ちょうちょ!」
「アミ持ってこようぜ」
新しい遊びに弟達はすぐ夢中になって蝶を追って其方に行ってしまった。
其れを見送るうちに胸に芽生えた疑問も泡のように消えてしまう。
クリスは再び本へ目を落とした。


その薄暗い部屋には3人の兄弟が眠っている。
彼らは此処で父の帰りを待っているのだ。
――――幸せな、夢を見ながら。

***
Ⅳさんの退場にショックを隠せない


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