忍者ブログ
<< 2024/05 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  >>
ぽえまのこうしん
更新記録と小ネタ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「何でスルメなんか要るんだよ」
「は?スルメ?」
携帯を弄りながら大輝が言う。
今吉から見ればまだまだ子供だが、そう呼ぶには抵抗があるほど身体は大きくなった。
しかし尻尾を弄りながらゴロゴロする姿は昔と少しも変わらない。
「ユイノーに居るモノ」
「ユイノー?」
結納。
「…なんや其れ」
脳内で漢字変換出来た途端声が低くなった。
何を言い出したのだこの子供は。
「ネット」
ネットって便利だなーちっと検索かけりゃ全部解るわ。
呑気に大輝は言う。
狐には縁の無い、人間の文明の利器って奴はなかなか有能らしい、が。
「そないこと聞いとるんとちゃうわ。結納ってなんや」
「アンタとオレの」
しれっと大輝は答えた。
「スルメより稲荷寿司とかのがいいか?」
「スルメなんてよう食わんしな。っていやそう言う問題ちゃう。何でワシとお前が結納かわさなあかんのや」
「今吉サン年寄りだからそういうケーシキ?とか拘るかと思って」
年寄りてなんや。
突っ込みたい処は多々あったが、それでは話が進まない。
「一応聞くが、ジブン、ワシと結婚する気なんか」
「前からそう言ってるだろ」
聞いてなかったのかよ、と大輝はむくれた。
こういう所は子供の頃とまるで変わっていない。
今吉は頭を抱えた。
子供の言うこと、と思っていたが、本気だったとは。
「ガキや思うて流しとったワシが悪かったわ。あんなあ大輝、人間と妖怪はホンマに結婚でけへんのやで」
「なんでだよ」
昔話では良くあんぞ、と大輝は言う。
そんな御伽話と一緒にするなっちゅうんや。
面倒ではあるがきちんと説明しなくてはならない。
「妖怪と結婚するっちゅーのは人間やめるちゅーことや」
「いいぜ」
即答に怯んだのは狐の方だった。
「簡単に言うんやない。オマエは其れでええかもしれんが親はどないすんねん。大輝居なくのうたら悲しむで」
親だけではない、友達とも、仲間とも、会えなくなるのだ。
「それでええんか」
「だってオレ今吉サンと一緒に居たいし」
阿呆だということは知っていたが此処まで阿呆とは。
今吉は長い溜息をついた。
「もう少しちゃんと考えや」
少し考えて今吉は続ける。
「…せやなあ、あと5年たって大輝の気が変わらんかったら、ワシも腹括るわ」

この子供と出会って、10年。
妖怪にしたらあっという間の時間。
自分は変わらないけれど、子供は大きく育った。
それだけでも住む世界が違うのだと、もっと早く気が付くべきだった。
この10年、楽しかった、けれど。
もう、この子供と会うことは出来ない、と思った。
この子供がこんなに眩しいのは人であるからだ。

だらだらと長い時間を生きている妖怪とは違う生き物なのだ。

大輝は狐の腕を掴んだ。
「放しい」
「やだね」
大輝は言った。
「今放したらアンタどっか行っちゃう気がする」
どんだけ勘ええんや。

掴まれた腕を振りほどくことも出来ずに狐は途方に暮れた。


***
青今
ショタ峰(小学生→高校生)×狐吉さん
もう観念してさっさと結婚してやれよ的な。
狐吉さんに続きを!と言ってくださった方がいらっしゃったので
調子こいてみました。
狐吉さんの尻尾もふもふ

拍手

PR