ぽえまのこうしん
更新記録と小ネタ。
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「なんだ雪男、久しぶり過ぎてアタシの顔忘れちまったか?」
ぽかーんとしやがって、とシュラは笑う。
「忘れるわけ無いでしょう」
忘れる、わけがない。
自分の受け持った塾の、何時もフードを目深に被って喋らなかった男子生徒が、シュラだったから驚いただけだ。
いや本当は驚いたのは其処では無い。
上級監察官、上一級祓魔師。
実力はあるくせにずっと面倒臭がってシュラは認定試験を真面目に受けずにいた。
それなのに。
シュラはにやりと笑った。
「ははーん。アタシが偉くなっちまったもんでビビってんのか、ビリー」
「誰がビリーです。別にビビってなんかいませんよ」
「そうか?『あんな不真面目な人がなんで!』とか思ってんじゃないの?」
からかう様な笑みを表情に乗せたままシュラは言う。
「思ってませんよ。…ただ、あんなに面倒臭がっていたのに、どういう心境の変化かと思っただけです」
「さてね。まあ気が向いたからからかにゃ」
誤魔化す様な返答が気に入らない。
気が向いたから。
そんな理由で上一級祓魔師になれるほど簡単な世界じゃない。
父さんの背中を追いかけているのか。
本当は問い詰めてみたい。
そんなにあの人が好きだったのか、と。
しかし雪男は其れをぐっと飲み込んだ。
まだ、そんなことを言えるような立場じゃない。
「やっぱ面白くないんじゃないの?」
雪男の顔を覗き込んでシュラが絡む。
「しつこいですね。別にそんなこと思っていないと言ってるでしょう」
「そうかあ?」
納得していない様子のシュラに雪男は言った。
「…すぐ追い越して見せますよ」
「お、言ったな雪男。何か賭けるか?」
そうやってシュラは昔のように笑う。
雪男も笑った。
子供の時のようにカモになってやるつもりはない。
「受けて立ちますよ」
負けるつもりはありません。
貴方は強い男がお好きでしょうからね。
聖騎士だったあの人を必ず追い越して見せます。
雪男の心の内を知ってか知らずかシュラは楽しそうに笑うのだ。
***
山田くんがシュラだったってわかった後くらい。
ライバルは義父さん(しかも故人だし)っつー。
年上を落とすのは大変そうだ…
でも雪男は大変努力家なので***
山田くんがシュラだったってわかった後くらい。
ライバルは義父さん(しかも故人だし)っつー。
年上を落とすのは大変そうだ…
何とかしそうな気がします。
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「出雲ちゃん浴衣めっちゃええなあ」
志摩という男は、とにかく女の子が大好きなのだ、と思う。
女の子ならば誰に対してもそんな風に褒めるのだ。
それが、何となく面白くない。
「…アンタ誰にでもそう言うんでしょ」
思わず声に出して言ってしまった。
「いやいやほんま可愛いと思うてるから言うとるだけで…思わず口に出とる言うか」
いや他の子にも言うとるとかそう言うんじゃなく!
慌てる志摩の言葉は益々言い訳になっていく。
やっぱり他の子にも言うんじゃないの。
面白くない。
其処で志摩の言い訳がハタと止まった。
「…今のもしかして自分にだけ言うて欲しいとかそうゆうこと?」
「ば、馬鹿じゃないの!」
思わず怒鳴っていた。
そんなこと、あるわけない。
そんなこと思ってるなんてありえない。
***
素直になれない出雲ちゃん可愛いかなて。
朴と一緒に購買部へ行こうとしたら奥村燐を見つけた。
塾では無く、学校で鉢合わせるなんて珍しい。
人通りの多い中庭の片隅にあるベンチで弁当らしき包みを広げていた燐は、此方の顔を認めると少し後退さる様な素振りを見せた。
気に入らない。
ずんずん歩いて行って目の前に立ってやる。
「何よ」
なんか文句あるの。
ベンチに座る燐は出雲に見降ろされて歯切れ悪くごにょごにょ言った。
「いやまた汚いとか言われるかと思ってよ…」
汚い。
この間の合宿の時の話だ。
貸してくれたTシャツを洗って返した、其処までは良かったのだが、妙に感激されたものでつい、汚かったから洗っただけ、と言ってしまったのだ。
謂わば照れ隠し、だった。
しかし燐は其れを気にしているらしい。
「…洗濯してないの?」
合宿場所となったあの古びた寮には奥村兄弟しか居ないのだと聞いていた。
男だけの生活、しかも雪男の方はともかく、燐はとてもマメな性格をしているとは思えない。
洗濯などしていなのではないだろうか。
今度は此方が後退さりながら問う。
「してるよ!」
燐はがあ!と怒鳴った。
「でもよ、洗濯ってあんま好きじゃねえんだよな」
「洗濯機に突っ込めばいいだけでしょう」
あの寮は洗濯機もないのだろうか。
そう思ったが違うらしい。
「その後があるだろ。干すのがメンドくせえんだって。雪男はすぐ皺になるだのもっときちんと干せだの言うしよ…」
確かに言いそうだ。
そう思って少し笑う。
「あ、でも料理は得意なんだぜ」
「はあ?料理?」
料理なんて、洗濯よりも大変じゃないの。
得意だなんて信じられない。
此方の思考を読んだのか、燐は広げかけていた弁当を指し示す。
「ホントだって!ほらこの弁当も自分で作ったんだぜ」
そう言いながら開けられた蓋の内側には、彩りも綺麗な美味しそうな弁当が詰められていた。
美味しそうだ。
「これを、アンタが?」
これを燐が作ったなんて益々信じられない。
「おお!食ってみるか?旨いぞ」
ほれ、と笑顔で差し出されたのは玉子焼き。
突き付けられた箸の先の其れをじっと見つめる。
その間にも出雲の後ろを他の生徒が何人も通り過ぎていく。
ふっくら焼き上げられたそれは見た目も美味しそうだけれど。
『あーん』と口を開けろ、と言わんばかりの笑顔の前で。
「要らないわよ!」
思わず怒鳴っていた。
朴も居るし、此処は人目が多すぎる。
こんな状況で食べられる訳が無いじゃない!
END
***
燐出雲
出雲ちゃんはツンデレだし
こういう状況で食べてくれるはずがないかと。
END
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燐出雲
出雲ちゃんはツンデレだし
こういう状況で食べてくれるはずがないかと。