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ぽえまのこうしん
更新記録と小ネタ。
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「毎度―!ブラックバードデリバリーです」
「ああ、ご苦労さん」
なんとか仕事も軌道に乗ってぼちぼち仕事が入るようになったある日、荷物を届けた先の倉庫で沢山の花に遭遇した。
このビルの一画に店を出している花屋の物らしい。
すっかり顔見知りになったビルの守衛に話しかける。
「カーネーション多いっすね」
「ああ、母の日が近いからね」
「あ、そっか」
そういえばもうすぐ母の日だった。
「忘れてたのかい?たまには親孝行してやんなきゃ駄目だよ」
カーネーションの1本でも贈ってやったらどうだい、と初老の男は笑った。
クロウには其れを贈るべき母親は居ない。
けれど母親と言えばマーサのことしか頭に浮かばなかった。
マーサハウスで暮らしていた時分も母の日の真似事をした事はある。
皆で手伝いをしてみたり、肩叩き券を作ってプレゼントしたり。
この日は花を贈るのだと言う事は誰かから聞いて知っていた。
その花はカーネーションというのだと知ったのはもっとずっと後のことだ。
カーネーションの実物もシティにやって来て初めて見た。
サテライトではとても手に入らない花だ。
「カーネーションかあ」
実は、一度はその花をマーサに贈ってみたいと考えていた。
 

今まで贈った事の無い、母の日を象徴する花。
マーサは喜んでくれるだろうか。
きっと気を使わなくていいと言いながらも笑ってくれるに違いない。

 
表に回り、花屋を覗いてみる。
試しに鉢植えの値札をひっくり返して見て吃驚した。
「うわっ結構するんだな…」
シティの住民にとってはそうでもない額なのかもしれないが、エンジンの開発やら男所帯の生活費やらやたら高級な珈琲を飲む浪費癖のある幼馴染やらのことを考えるととても手が出ない。
此れを贈るくらいならもっと実用的なものを買ってやった方が喜びそうだ。
そういやフライパンが焦げて使いにくいって言ってたっけ。
とは言え、この花を一度はプレゼントしてみたい、喜ぶ顔が見てみたい、という気持ちも捨てきれない。
見れば切り花で1本売りもあった。
「こっちでいいかー?」
其方の値段を見ながら唸っていると知った声が聞こえた。
「あれクロウめっずらしー花屋で何してるの?」
「龍亞、龍可」
学校帰りらしい制服姿の双子だ。
一歩遅れて兄に追いついた妹は花とクロウを見比べて言った。
「あ、母の日ね。マーサにあげるの?」
「あ、そっか!」
龍亞も言われて気が付いたらしい。
「んー、花も贈ってみてえけど、実用的なものの方が喜ぶかなってさー」
「そうね」
龍可はちらりと値段を見て言った。
敏い少女はクロウが金銭面で二の足を踏んでいると気が付いたのだろう。
「えーせっかくだし買って帰ればいいのに。もうすぐじゃん」
「もう、龍亞」
龍可が龍亞の上着の裾を引っ張る。
クロウは苦笑した。
「切り花なら当日買った方がいいだろ」
「えー鉢植え買わないの?切り花より長持ちするよ」
「龍亞!」
「その分フライパンでも贈るって」
ようやく気が付いたらしい龍亞は妹とクロウの顔を交互に見た。
「…そっか。そうだね、その方が喜ぶかもね。花は食べらんないし」
食べられない、という言い方がなんとも龍亞らしい。
その後、寄り道せずに早く帰れよ、と言って二人とは別れた。

だからクロウは龍亞が「いいこと思い付いた!」と龍可に耳打ちしたのを知らない。




 
母の日当日、クロウはポッポタイムからそう遠くない花屋で切り花を買ってきた。
一本ではやはり寂しい気もするが、フライパンも買ったし、子供達に土産も用意した。
まあ、この花を贈ってみたい、という自分の願望は満たされた訳だ。
近くなので徒歩で来た為、ブラックバードを取りにポッポタイムへ戻ったら、ブルーノが一本のカーネーションを差し出しながら満面の笑みで迎えてくれた。
「クロウママいつもありがとう」
「誰がママだ」
本当は脳天にかましてやりたい処だが、あいにく届かないので額にゴスと手刀をくれてやる。
「痛い!」
図体は大きいが大人しい草食男子系のブルーノはやり返してくることも無く半べそかきながらも言葉を続ける。
「だってクロウの作ってくれるご飯いつも美味しいし、ボクらが作業に熱中して徹夜すると寝ろよって怒ってくれるし、寝ちゃうと毛布かけてくれるし、クロウってお母さんみたいだよねって」
「誰がお母さんだ」
再び突っ込む。
其処へ双子がやって来た。
「あ、居たクロウ!間に合ったー」
「もう、龍亞が寝坊するから」
その後からアキもやって来て皆で1本づつカーネーションをクロウへと差し出しす。
「何なんだよ一体」
止めにジャックと遊星までもカーネーションを持ってくる。
「遊星まで…」
「実は龍亞の発案なんだ」
最後の砦と思っていた遊星にまでカーネーションを差し出され、クロウはがくりと肩を落とす。
遊星は笑った。
龍亞が言う。
「本当は鉢植えを買ってきてマーサにあげて、て言おうかと思ったんだけど、それじゃクロウが遠慮しちゃうと思ってさー」
「だから皆で一本づつクロウにあげたらどうかしらって」
それなら受け取ってくれるでしょう、と龍可は言った。
「クロウはいつも頑張ってるからさ、皆で何か喜ぶ事してあげたかったんだ」
「お前ら…」
 

喜ぶ事をしたい。
それは自分にも覚えがある事だ。
大好きな人が喜んでくれたら、笑ってくれたら嬉しいから。
自分も笑顔になれるから。

 
ちょっと照れ臭いが。
 


「ありがとな、お前ら」
クロウが双子の頭を撫でると二人は嬉しそうに笑った。





END

***
クロウママいつもありがとう❤
支部の企画に乗っかって書いてみたが
サイトにUPする場所が無い(^^ゞ

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「遊星お前何処まで行って来たんだよ」
「いやちょっと…」
困っている人がいたから少し手伝っただけ、だった。
そう正直に言うと夕食の準備中だったらしいクロウはおたまを振り上げて説教モードだ。
「だいたいお前は人が良すぎるんだよ。今のご時世NOと言える勇気も必要だぞ!」
クロウだって人のことは言えないだろう。
と思ったらまさにブルーノがにこにこ笑いながら其れを代弁してくれた。
「クロウに言われたくないけどね」
「やかましい!」
…自覚はあるんだなあとくすりと笑ったら膨れたクロウに睨まれた。

***
原形留めぬ元ネタは男子高校生の/日常
なのに
鬼柳の出番が無くなってるという。

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「何でアイツこっち来ると当たり前みたいにオレの部屋泊まるんだよ」
クロウが不満そうにそう言った。
アイツ、とは鬼柳のことだ。
「嫌なのか?」
遊星は心底驚いてそう返した。
まさかクロウが嫌がっているとは思わなかった。
「鬼柳が嫌なのか?それとも鬼柳が泊るのが嫌なのか?」
違う、とクロウは言う。
鬼柳がシティに来れば、本人は気付かれていないと思っているらしいが、一番嬉しそうにしているのがクロウだ。
どちらも嫌な筈がない。
「じゃあ鬼柳と一緒なのを皆が知ってるのが嫌なのか?」

「……最後の」

小さな声でクロウが認めた。
ああ可愛いなあと思う。
鬼柳に話したらきっと大喜びするだろう。

***
皆公認で空気読まれるのが恥ずかしい。


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彼らの言うにはオレはその昔此処で宮司をやっていた、らしい。
そしてその後も転生する度に此処へ来ているのだとか。
どのくらい昔からの付き合いかと言うと、自称見た目よりずっと長生きな子供たち曰く「10年たった?」「100年くらい?」「1000年程前か?」と言ったカンジのアバウトさで、まあようするによくわからない。
その度に昔のことは覚えていないが、其れでも何故かちゃんと此処へ戻ってくるらしい。
「まあそのうち思い出すだろう」
何時もそうだった、問題無い、とみつを風な子供・遊星は言う。
「いずれにせよお前はまたここに戻って来た…歓迎してやるぞ」
金髪のジャックが尊大に言い放つ。
遊星が頷いた。
「お前は人間でオレ達は違うが…オレ達は仲間だ」
「オレ達ずっとお前を待ってたんだぜ」
オレンジのクロウがそう言って嬉しそうに笑った。

おかえり。

何故だろう、記憶なんか無い筈なのに。
その言葉が嬉しくて泣きそうだ。

***
こないだの続き。

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「遊星、酔っているのか」
「酔ってなどいない」
酔ってないと言い張る人間ほど酔っているものである。
遊星は普段と変わらないように見えるが、心持頬が赤らんでいる。
「酔っているように見えるのか」
「見えるなあ」
「そうか。ジャックがそう言うのならオレは酔っているのだろう」

じっと此方を見つめてくる遊星の目は潤んで熱を持っている。
目は口ほどにモノを言う、とはよく言うが、遊星は普段無口な分、とくにそれが顕著だと思う。

サテライトには未成年者は飲酒禁止ですと言ってまわる大人は居ない。
ジャックも一緒に飲んでいるため飲酒を咎める気はないが、さてこの酔っ払いをどう扱ったものか。
もしかしたら自分も相当酔っているのかもしれない。


***
ジャ遊
酔った勢いで一線越えそうな(^^ゞ

恋するカレンダー12題 
桜色に頬染めた君と

お題Fortune Fate

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