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「沖田隊長、報告書書けましたか」
「んなもん書く気にもなりませんや」
机の上に顎を載せてブスっとした顔で沖田は言った。
まあ予想通りだな、と山崎は思う。
報告書とはいっても実質反省文みたいなものだった。
其れを書きあげるまで絶対寝かせるな、という副長のお達しで、山崎は様子を見に来たのだ。
そんなんオレに任せないでくださいよと思う。
「そんなこと言ってないでさっさと書いちゃってくださいよ」
「なんか褒美でもなきゃ書く気になりませんや」
ニンジンをぶら下げてくれなきゃ馬だって走りませんよ、と沖田は言う。
自分が大暴れした結果、こうなっているのになんで褒美を要求してるんだろう。
しかもなんで自分が褒美をやらなきゃならないんだろう。
しかし仕方無い、此れを書かせるのが今の自分の仕事なのだ。
「…褒美って何が欲しいんですか」
オレが出来ることにしてくださいよ、と言うと沖田はにやりと笑った。
「山崎」
***
書いたら山崎をイタダキマス。
拍手文でした。
「沖田隊長って猫みたいですね、ほんと」
猫。
確かにそうかもしれない。
寒い時には暖かい陽だまりを、猫という生き物は居心地のいい場所を見つけるのが上手いのだ。
山崎の部屋から良く見えるこの場所でゴロゴロとして居れば、きっと来てくれるに違いないと思っていた。
だから来てくれるまでゴロゴロしていた。
確信犯だ。
猫は居心地のいい場所を確保するために、此れでも努力しているのだ。
「休みなんだから『隊長』はナシにしましょうや」
「そうですね、沖田さん」
山崎は笑ってちゃんと言う通りにしてくれる。
そうして日当たりのいい縁側に並んで座ってお茶にする。
山崎の淹れてくれた茶を啜って、買って来てくれた団子を頬張る。
「それにしても日番だってのに、オレ達暇ですねえ」
一口茶を飲んで山崎が言う。
「他にやることもなくダラダラと…なにやってんすかねえ」
「いいじゃないですかい」
溜息を吐く山崎に沖田は言った。
「あったかい日向で山崎と団子食って…こんな平和で幸せな休日はありやせんぜ」
好きな人の隣で過ごす以上の幸せなんてそうそうありはしない。
沖田の言葉を聞いて、山崎は小さくうわぁ、と言った。
気のせいか少し頬が赤い。
「…なんか沖田さんって時々凄い事言いますねえ」
「スゴイ事って何ですかい」
「何かまるで…」
「まるで?」
促したが、その続きは山崎の口から出てこなかった。
なんでもありません、と誤魔化されてしまった。
『まるで告白でもされているようだ』
そう、山崎が思ってくれればいい。
そうして少しでも自分を意識するようになってくれたらいい。
猫は、自由気ままに見えて、実は居心地の良いあの子の隣を確保することに必死なのだ。
***
沖→山
実は沖田さんはお休みじゃなかったりして(笑)
「ちょっと沖田隊長、其処通して貰えませんか」
人の前で文字通り通せんぼしている沖田は人の悪い笑みを浮かべて言った。
「山崎がオレのこと好きって言ってくれたらどいてやりますよ」
「何でオレがそんなこと言わなきゃなんないんですか」
山崎の言葉に沖田はショックを受けた様子で俯いて見せる。
「そう…山崎はオレの事嫌いなんですね」
「いや別に嫌いってわけじゃないですけど…」
「いえ、いいんですよ…本当は薄々わかってましたさあ…」
「ちょ、やめてくださいよそういう演技ぃ!演技だってわかってますからね!」
そうは言ってもどんよりと落ち込み、縄の先に輪を作って其れを木に掛けようとされたら焦る。
「ちょとぉおお!持ってた縄でわっか作るのやめてえええ!!わかったわかりました、オレが悪かったです!スイマセンでしたああ!」
沖田はにやりと笑った。
「山崎がオレにちゅーしてくれたら許してやりますよ」
「ハードル上がってんじゃねえかあぁあああ!」
***
だってどSですもの(^-^)
拍手文でした。
のんびりした声に銀時は食べていた団子を落としそうになった。
口を開けたまま、へらりと笑って山崎が手を振るのを見る。
「…ジミー」
「こんなトコで油売ってちゃ駄目じゃないですか。新八くんに怒られますよ。仕事もしないで何やってんですかって」
新八の口調を真似て山崎は笑う。
銀時は唇を尖らせるとあげ足で返した。
「油なんて売ってないよ、団子食ってるだけです」
山崎の方はわかりやすくお使い帰りといった風情だ。
買い物袋から大量のマヨネーズチューブが覗いている。
「つかさージミー、キミねえ、その呼び方止めてくれる?」
「旦那?」
「いやその前」
「ああ白夜叉…嫌なんですか?」
嫌に決まってる。
こんな人の多い所でその名で呼ばれたいと誰が思うだろう。
わかっている筈なのにしれっと嫌なんですか、なんて聞くとは、意外にいい性格だ。
「嫌っていうかさーほら銀さん今は善良な市民じゃん。そんな昔の名前で呼ばれたらドキッとしちゃうわけよ」
山崎は笑った。
「そりゃ脛に傷持つ身だからですよ」
「…結構言うね、ジミー」
銀さん傷ついちゃったよ。
態とらしく傷心のポーズを取ってしょぼくれて見せるが山崎は笑うばかりだ。
先ほど落としかけた団子を口に押し込みながら、銀時は山崎を見る。
そういえばこの地味な男は監察なのだった。
「ジミーさー、実はオレが白夜叉だって前から知ってた?」
見廻り組とのごたごたの中で、白夜叉だと名乗った時、真選組に特に動揺は見られなかった、と思う。
むしろ、ああやっぱり、的なカンジだった。
山崎は笑って答えた。
「1万年と2000年前の出来事じゃあるまいし、調べりゃ本名なんか出てくるもんですよ」
「泳がしてたってわけか」
「いや、そういう訳じゃないですけど。旦那、善良な市民ですもん」
泳がしていたのならヅラがうろうろしている時に踏み込んで来てもおかしくは無いだろう。
そうしなかったということは、一応『善良な市民』として信用はされていたということになる、のだろうか。
そういう訳じゃない、という言い方からしてヅラの隠れ家くらいは突き止めて居そうではある。
「…意外に仕事出来る子だったんだね。ジミー」
「しみじみ言わないでくださいよ」
山崎は笑った。
「まあでも」
どっこいしょ、と隣に腰掛けて山崎も団子を注文する。
「オレは地味なだけが取り柄の男ですけど、旦那みたいな人は平和な時よりも非常時に輝く人だと思いますよ」
運ばれてきた茶を啜って続ける。
「いっそ真選組に入りませんか?旦那の腕ならすぐに隊長クラスになれると思いますよ」
「…それ本気で言ってるのジミーくん」
思いがけない勧誘に少し声が低くなる。
山崎は其れに気がつかないようにまた笑った。
「旦那の腕を腐らせておくのは勿体ないかなと思いまして」
「オレは善良な一般市民ですよ」
「そうですね」
「ホント言うとオレも新八くんやチャイナさんと一緒にワイワイやってる旦那の方が好きです」
にこ、と笑って山崎は立ち上がった。
運ばれてきた団子の料金を払って、銀時の方へそっと寄せる。
「じゃ、また。道草食ってないでちゃんとお仕事してくださいね。『万事屋の旦那』」
「道草なんて食ってないよ。団子食ってるだけです」
銀時の減らず口に楽しそうに笑って、山崎は帰って行った。
山崎のおごりの団子を口に入れながら思った。
意外に侮れない。
END
***
銀山
山崎本当は出来る子説を主張したいのだけれども
たまの一件で不安になってきました(^^ゞ
お前ちゃんと仕事してんの…
まあしかし書きかけが勿体ないので仕上げてUP
お使い帰り、見知った顔を団子屋の店先で発見した。
向こうも此方を見て言う。
「あー真選組の…ええっと誰だっけ」
首を傾げる銀時に山崎は言った。
「山崎ですよ!」
「ああそうだったジミー」
「山崎だっての!」
「うん、ジミー」
適当な返事と共にぱくり、と団子に食らいつく。
「…旦那、本気で覚える気ないですね」
「いやそんなことないってジミー」
「山崎だって言ってるだろがぁあ!!」
怒鳴る山崎と対照的にのんびりと茶を啜ってから銀時は言った。
「…そういえばさージミーくん」
「山崎ですってば!」
もう突っ込むのも疲れてきた。
団子を咀嚼しながら銀髪天パはにやりと人の悪い笑みを浮かべる。
「沖田くんもオレの事、『万事屋の旦那』って呼ぶんだよねぇ」
不意をつかれてうっかり赤くなってしまった。
***
気が付いたら同じ呼び方してた、みたいな。
ちょっと銀→山っぽい。