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ぽえまのこうしん
更新記録と小ネタ。
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子供は縁側に座って暇そうに足をぶらぶらさせていた。
その足には包帯が巻いてあるが、この様子では大した怪我ではなかったのだろう。
怪我したのだから大人しくして居ろと大人に言われて不満顔、といったカンジだ。
「おー元気そうやん」
そう言って持っていた虫取り網と籠を振って見せる。
「ホントに拾ってきてくれたんだな!」
子供は此方を見つけると駆け寄って来て笑った。
山に蝉取りに来て木から落ちたらしい子供を祖父母の家まで送ってやったのは単なる気まぐれだった。
結構な高さから落ちたのに泣かなかった子供にほんの少し感心しただけだった。
子供が落とした網と籠をあまりに気にするので明日拾ってきて届けてやると約束したのも、ただ五月蠅いから、それだけ。
「きつね、ありがとな!」
買って貰ったばっかだったんだ、と子供は嬉しそうに笑う。
ちょっと可愛い。
しかしきつねという呼び方は気に入らない。
「きつねってなんや、今吉さん呼びい」
「今吉」
「呼び捨てすんなや。ワシはお前の何倍も長生きしとんのやで」
年上に対する礼儀がなっとらんわ、というと子供は言った。
「今吉サン、そんな年寄りなのか。若作りだな」

「誰が若作りや」



「人間なんて10年も経てばワシのことなんか忘れると思うとったわ」
誤算やった、と狐は人の腕の中で大袈裟に嘆く。
忘れると思ったからこそ、正体がばれても放置しておいたのだろう。
「うっせえな」
「しかもこんな馬鹿でかくなってからに」
抑え込まれて動けないのも不満なようだ。
「昔はこーんなちっこくて可愛かったんにのう」
「悪かったな、でかくなって」
アンタは全然変わらないな、と大輝は心の中で呟いた。
小さい頃、若作り、と称したその容姿はあの頃から少しも変わっていない。
「当たり前や」
妖孤は笑う。
「ワシは人間とはちゃうからの」

知っていることなのに胸の奥が痛むのは何故だろう。



***
青今
ショタ峰(人間)×狐今吉さん
ショタ峰が狐さんの尻尾もふもふ!と思っていたのに
なんか違う。

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「諏佐あ、ケーキやでー」
人の部屋の入り口で今吉がケーキの箱を掲げてみせる。
「買って来たのか」
何処へ行ったのかと思ったら。
「さすがにワンホールは断念したわ」
「賢明だな」
男二人でケーキワンホール。
考えただけで胸やけしそうだ。
「イチゴとチョコどっちがええ?」
箱の中にはショートケーキが入っていた。
「お前どっちがいいんだよ」
「いちご」
「じゃあチョコ」
テーブルの上を片付けてやると勝手に紙皿を並べ始める。
「フォークないんで箸でええ?」
「シュールだな」
まあ食えりゃ何で食おうと問題はない。
「鳥も買うてきたで。ファミチキや」
ファミチキは美味いわ。正義やで。
今吉が力説する。
「ケーキと鳥あればとりあえずクリスマスっぽいやろ」
「そうだな」
せっかくのクリスマスやし、勉強だけやなくそれっぽいことせんとな。
今吉は言う。
「クリスマスに部活から足洗うて受験生なったのもきっとキリストさんのお導きやで」
「残念だがオレはキリスト教徒じゃない」
「ワシもや」
今吉が楽しそうに笑う。

強がっているようにしか見えないのは、試合の後の涙を見てしまったからだろうか。

お前はもう少し泣いてもきっと罰は当たらないよ。

***
諏佐今
誠凛VS桐皇の試合は23日だったとか聞いて
もうなんか…クリスマスには諏佐さんと勉強してたんだこの人…と思ったらもうホント…

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池の畔に立つその人の横顔を見て思った。
綺麗だな。
サトリは此方を見ていつもの調子で笑う。
「おおきに」
腹黒のくせに、本当に美人だ。
「褒めるか貶すかどっちかにしてや」
「どっちも本当だから仕方ないだろ」
腕を伸ばして引き寄せようとしたら、す、と避けられた。
サトリが笑う。
「ワシに触ったらあかんで。ジブンの心の奥の奥まで全部読んでまうよ」
「読めばいいだろ」
うっせえんだよいちいち。
無理やり抱き寄せて腕の中へ閉じ込める。
『アンタが好きだ』
「どうせ俺の『声』なんか聞こえてんだろが」
青い鬼は閉じ込めた腕に力を込めて笑った。
「まあなあ」
サトリも笑う。
「お前ほど強い『声』を響かせる奴はおらんよ」
他のことは何も聞こえなくなるくらいの強い声。
其れ以外は聞こえなくなる、とサトリは笑う。
「けどなあ、ワシが『ソレ』に答えてやる義理は無いんやで」
鬼も唇を釣り上げて笑った。

「上等だ」


***
青今
鬼青峰×サトリ今吉さん
此れ別に妖怪ぱろでなくても良かったと思った

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『月が綺麗ですね』
高尾がその言葉の意味を知ったのはまったく偶然だった。
ネット上で「『月が綺麗ですね』ってメールしてみよう」とか言うスレを発見し、何か意味があるのかとググってみた結果だ。
そうでなければ知りもしない言葉だったろう。
ナニコレどんだけロマンチスト!
そう言ってひとしきり笑った後、うっかり、イイナと思ってしまった。
苦しく切ない胸の内をそっと伝えるのにこんなに合う言葉も無い、と。
高尾は恋をしていた。
認めたくはないが確かに恋だった。
どんなに、そんなことありえない、と自分で否定してみても、一日の内起きている時間のほとんどをソイツのことばかり考えて過ごしていては、認めざるを得ない。
気持ちを隠して側にいるのは正直辛かった。
いっそのこと告白してしまおうかとも思うけれど、今の関係を壊すことが怖くて踏み出せない。
高尾の恋する相手は男だった。
 
自主練が終わった帰り道はいつも真っ暗だ。
けれど今夜は違った。満月だ。
その光に晒されて、普段は暗い道さえ仄かに明るい。
「満月スゲーな~」
高尾は感心して言った。
昔から日本人が月を愛でてきた訳もなんとなくわかる気がする。
暗い道を照らす光。
月を呼んだ歌とかすげえ多いらしいし。
半分寝ていた今日の授業を思い出していると緑間が言った。
「月が綺麗なのだよ」
ナニソレ真ちゃんオレ『わたし死んでもいいわ』って返すトコ?
いつもの調子で笑いながら振り返って、そうチャカそうとしたけれど、言葉が喉に引っ掛かった様になって出てこなかった。
緑間は月など見て居なかった。
まっすぐ、高尾を見ていた。
「…わたし、しんでもいいわ…?」
やっとの思いで声を出すと、緑間は少し笑った。

「お前が知っているとは思わなかったのだよ」

苦しく切ない胸の内を伝えるのにピッタリな言葉だと。
高尾がそう思った言葉を緑間はどんな気持ちで今言ったのだろう。



END

***
緑高
どんなジャンルでも一度は「月が綺麗ですね」ネタをぶち込んでくる病気。
蓋を開ければ両片思いでした的な。
遅刻どころかネタ的にかすっても居ないけども
高尾お誕生日おめでとう!!!なのだよ!!!

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青峰大輝は走っていた。
他の連中が何処に居るのかは分からない。
けれど野生動物並だ、と評されたこともある自分の勘を信じて走る。
見たこともないような広い日本家屋。
長い廊下には人は居ない。
何故こうなった。
ついさっきまで部室に居た筈だ。
練習には出ない癖に部室にはちょこちょこ顔を出している、其れが良かったのか悪かったのか。
2軍の誰かが拾って来たとかいう人形がどうしてだか部室に転がっていた。
今吉が気味悪がり、青峰も嫌なカンジがすると、其れを捨てて来いと桜井に押し付けた。
そうして気が付いたら一人で此処だった。
此れは何か面倒なこと、心霊現象的な物に巻き込まれたな、と思った。
青峰は多少霊感がある、らしい。
自分では良く解らないし、ホラー系は基本嫌いだが、見えるモノなら話は別だ。
なんか嫌なカンジのモノはとりあえずブッ飛ばしとけ、程度の適当さだが、とりあえず払うことも出来る。
成仏させているのか追い払っているのは判断出来ないが、中学時代、赤司にまあ大輝はそれでいいんじゃないか、と言われたので、それで納得している。
とりあえず武器になりそうなものは持っていたバスケットボールだけ。
でも此れで十分だ。
とにかく他の連中と合流しなくては。
妖怪なんじゃねえの、と巷で囁かれる今吉は、アレで結構な怖がりなのだ。
そして青峰が払えることも知っている。
素直では無い恋人だが、多分、待っている筈だ。
「ここか!」
青峰は辿り着いた部屋の襖を勢いよく開けた。
 



「何処や此処」
気が付いたら宴会でも出来そうな広い和室に居た。
旅館か何かだろうか。
襖はすべて閉じられ、窓も開かないようだ。
「若松、体当たりかましてみい」
「どっせーい!」
いつもの掛け声と共に若松が襖に体当たりしたが、びくともしない。
「まあこの状況やし想定内やな」
やらせておいて今吉はさらりと言う。
しかし通常営業の人が多々居ると異常事態でも其れなりに落ち着くものである。
さてどうしようか、と青峰以外の桐皇レギュラー、今吉・桜井・諏佐・若松の4人が顔を突き合わせた。
「っつーかその人形まだ持ってたんかいな」
「ひい!」
桜井が悲鳴を上げて持っていた物を放り投げた。
さっきの人形。
床に落ちた其れから黒い何かがむくむくと湧き出してくる。
煙のような、泥水の塊のような、不気味な其れ。
「桜井、こっちや」
手を引くより先に桜井が倒れた。
黒いモノに足を取られて転倒したのだ。
其れに引き摺られて畳に爪を立てる桜井の腕を今吉が掴んだ。
今吉も勢いで引き摺られ、其れを諏佐が捕まえた。
若松が最後尾で踏ん張る。
「なんや綱引きみたいやの」
「呑気だな今吉」
そういう諏佐も結構な通常運転だ。
今吉は言った。
「呑気なこと言わなやってられんわ」
「主将、スミマセン、ボク…!」
「しっかりせいや桜井、今青峰が来るからの。アイツこういうの追い払えるさかい」
「スミマセン、離してください」
「何言うとるんや」
「だってこのままじゃ、皆、」
「阿呆なこと言うなや。此処でお前見捨てたらワシの寝覚めが悪いやろが」
 
「アンタのかよ!」
 




「此処でお前見捨てたらワシの寝覚めが悪いやろが」
「アンタのかよ!」
襖を開けたと同時に思わず突っ込んだ。
瞬時に状況を判断して、黒い何かに向かって持っていたボールを投げつける。
断末魔ともとれる不気味な音を残して黒いものは霧散した。
今吉はひらひらと手を振って笑った。
「助かったわ青峰。死ぬか思うたで、桜井が」
「あのな」
自分は巻き込まれる気は無かったとでも言いたげな其れは、いざとなったら桜井を見捨てて逃げたんじゃないかと思わせる。
何処まで本気なのかこの男は。
「ほれ桜井、大丈夫かいな」
今吉は何時のも笑顔で、倒れたままの桜井を揺り起こす。
身体を起こした桜井がゆらり、と揺れた。
ヤバい、と思った。
「ちょ、待て今吉さん!」
「…っ!」
霊感は無いに等しいが、勘は良い今吉はすぐに伸ばされた桜井の腕から逃げようとした。
だが、遅かった。
「…っ」
桜井の腕が今吉の首を締めあげる。
「今吉さん!」
青峰が桜井の背中を思いっきり叩いた。
「…がぁっ!」
桜井の口から先ほどの黒いモノと同じナニカが出てきて、霧散して消えた。
「大丈夫か、おい!」
咽る今吉を抱き起こして青峰は叫ぶ。
「…あー…大丈夫や」
青峰を手で制し、今吉は桜井の肩を軽く叩いた。
「桜井、生きとるか?」
「…っ主将…ボク…」
ぼんやりと目を開けた桜井は弾かれたように起き上がる。
「…スミマセン!」
「ハイハイ、泣かんでええで。無事でよかったわ」
よしよし、と今吉は桜井の頭を撫でた。
青峰もホッと身体の力を抜く。
人の嫌がることさせたら右に出るものは居ないとか言われる通り、本当に敵に回したら面倒な主将ではあるが、身内には結構甘い、と思う。
自分は何も気を使ったり面倒見たりしていません、という顔をして、さり気に気遣いしてくるのだ。
例えば今も。
取り憑かれた桜井に、若松も諏佐も多分多少の恐怖感は持った。
それを首を絞められた自分が一番に駆け寄ることで払拭したのだ。
それから。
「…スミマセン、あ・ありがとう、ございます」
「別にワシ何もしとらんわ。青峰のおかげやで」
しゃくりあげながら礼を言う桜井に今吉はそう告げた。
手柄を人に押し付けるのも得意だ。
そうして自分はやっぱり何もしてません、という顔をするのだ。
 



気がつけば部室に戻っていた。
「あーなんや酷い目おうたな」
やれやれどっこいしょ、とおっさんくさい仕草で今吉はベンチに座った。
「ほんじゃもう今日は明るい内に皆はよ帰り」
主将の言葉に皆帰り支度を始める。
「青峰、桜井送ったってやってや」
「嫌だね」
「いえ、大丈夫です!スミマセン!!」
ペコペコ謝りながら部屋を出ていく桜井を見送って今吉が言った。
「大丈夫かいな」
「平気だろ」
呪詛の類ならもう返した筈だし、別に良を狙った訳じゃないし。
「なんややっぱりワシかいな。ワシ善良な市民やのに」
「嘘つけ腹黒。まあアンタだけってカンジじゃなかったけどな」
青峰には詳しいことまで解らない。
何となくそう思った、ただの勘だ。
二人きりになった部室で今吉は言った。
「で、青峰は帰らんの」
「アンタ送ってく」
「ワシ寮やしすぐ其処やで」
「…痕付いてる」
白い首に、くっきりと指の跡が赤黒く残っている。
青峰は今吉の首に手を伸ばした。
そっと指先で触れる。
「…ああ」
すごい勢いで絞められたしなあ、と何処か他人事のように今吉は言った。
そのどうでもいいような口調が気に入らない。
青峰は顔を寄せてその後をべろりと舐めてやった。
「…っ!なにすんねん」
「消毒」
「消毒て、何やねん」
今吉が青峰を押しのけようとする。
「こういうトコから霊障出るかもしれないからな」
「…だからて舐めるなや」
霊障と聞いて今吉の抵抗が減った。
青峰は笑う。
「だってオレ払えるし」
指の後に沿って舐めて、ついでに軽く歯を立てる。
「…っ」
今吉が小さく息を飲んだのが解った。
気を良くして更に舐め、吸って痕を残す。
「…ちょ、此処でするんか?」
この部室から変な場所に飛ばされたのだ。
平静を装ってはいたがやはり此処に居るのは多少怖いらしい。
青峰はにやりと笑った。


「んじゃアンタの部屋行っていい?」



END

***
青今
今吉さんが妖怪とか言われてるくせに怖い系苦手だったら可愛いな、と
個人主義だしワシは知らんとかいう顔して結構気を配ってたらいいな、と
そんで実は皆に愛されてたらいいな、と
やっぱり青今でしょ!を混ぜた結果。
青峰が霊が見える払える人。適当だけど。
そして諏佐が空気になってしまって件についてはホントスイマセン。
でも今吉さんの幸せを考えるならやっぱ青峰より諏佐ぁだよなあとは思ってるのよ。
だけど今吉さんが青峰が好きだ(=「最強は青峰や」)って言うんだもの。仕方ない。
若松も出番少なくてすまん。

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